せめて隣が、貴方じゃなければ







大切な人の幸せを願わない奴なんて居なくて、出来たら俺が幸せにしてやりたいとも思うわけで。俺にとってその相手が舞花だった。

「あーぁっ、卒業…しちゃったね」

そういって笑う舞花は綺麗で、あーぁなんて言ってるけど全然辛そうじゃない。それどころか少し嬉しそうでもある。

「どうせすぐ逢う約束してるだろ?」
「んーまぁそうなんだけど、それでも寂しいよ」

舞い散る桜が別れを告げていて、次の出逢いを運んでくる…そうなればいいのに、そうはなれないだろう俺。何故ならそれは…

「私は後1年ここで、一樹会長は大学に進んでいってしまうし…取り残された気持ちになるもん」

先程まであんなに明るく振る舞っていたのに、急にしゅんとした表情になる舞花に、俺の瞳はぐらりと揺らいだ。
そう、舞花を幸せにするのは俺じゃなくて不知火先輩。俺の憧れの人。
今でも忘れない、付き合うことにしたんだと先輩に告げられたあの日を。あぁこの人には勝てないな…咄嗟にそう思って、思ってしまうくらい舞花を愛してる自分に気付いて泣きたくなった。
俺じゃ、多分…いや絶対舞花を幸せになんて出来ない。こんな欠陥品…いつ終わるか分からない俺に舞花が全てを委ねてくれるわけないって。

「不知火先輩はお前を置いてったりしねぇから大丈夫だ」
「なんで哉太にそんな事わかるの?」
「先輩の事ずっと見てるんだ、分かるに決まってんじゃねぇか」

同じくらい舞花の事も見てる、そうは言えないけれど。でも想うなら許されるよな?

「なにそれ同性愛?」
「ば…ばか!そんなんじゃねぇよ!」

大好きな人には笑っていて欲しい、だけど…






せめて隣が、貴方じゃなければ

(俺、行動したかもしれません)
(でも、もう貴方の幸せは奪えません)

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20120412




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