初恋は実らない、ジンクスさえも憎い







瞳の先にいるのは
私じゃなかった






「羊くん羊くん!」
「どうしたの?」

頭を撫でながら羊くんはふわりと微笑んだ。私は羊くんが大好きで、いつもこうして理由もなく彼の傍にいた。
恋してる、まさにそんな感じで、羊くんが居るだけで毎日が楽しかったし、寧ろ羊くんが居れば後はどうでもよかった。

「また天体観測したいなー」
「舞花は本当に好きだよね、天体観測」
「羊くんだって星見るの好きなくせに」
「それは否定しないよ。そうだ、月子や錫也たちも誘おうか」

ちくり、胸が少しだけ痛む音。もう何度も感じるこの痛みだけど、心は全然慣れてくれない。
みんなで天体観測した方が楽しいよねって言う羊くんの言葉に素直に頷けなくて、私は曖昧に笑うしか出来なかった。

羊くんは月子が好き。
そんなの誰が見ても明らかで、それがちょっぴり…ううん、凄く悲しかった。
ねぇ、私だってこんなに好きなのに。
月子より羊くんの事思ってるのに。
そう言えない自分が嫌だったし、言って嫌われるのも怒られるのも嫌だった。

「舞花?ぼーっとしてる…お腹すいたの?」
「へ…ぁ、うん。すいた…かな」
「じゃあ戻ろうか、錫也におにぎり貰おうよ」

羊くんはもう走り出しそうで、それがなんだか可愛くて、さっきの黒い気持ちがすーっと消えていく気がした。でも…

「願わずには居られないよ、貴方の恋の終わり…」

好きな人の幸せを願うなんて大人な事は私には出来なくて、行こうと差し出された手を握り返しながら、私はまた彼の傍にいる口実を探す。






初恋は実らない、ジンクスさえも憎い

(彼の初恋は彼女)
(私の初恋は彼)
(ジンクスなんて大嫌い)

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20120410




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