百年の恋をも冷めさせてほしい
好きでした…すき、でした。 でももう届きません。 この想いは、何処へ向かうのでしょう。
「桜が散ってくのってやだね」
彼女はぽつりとそう呟いた。掛ける言葉が見つからない俺は、黙っている事しか出来なくてもどかしい気持ちをなんとかやり過ごしていた。
「上から下に落ちるだけかと思ったら、風に靡いて地に伏す事も許されない」
まるで、私の想いみたいね、と苦笑いを浮かべながら吐く舞花が直視出来なくて、だから代わりに抱きしめた。
「もう…楽になれよ、辞めちまえよ」 「…哉太」
俺はお前たちの傍に居るから分かるんだ。錫也の舞花への中途半端な優しさも、月子が遠慮がちに錫也に近付くのも、全部分かってるんだ。
「哉太を好きになればよかった」
舞花の言葉は小さく俺を抉る。恋愛対象じゃない、そんな事知ってた。錫也を見る舞花の瞳の意味が分からないくらい鈍いわけじゃない。だから、俺は舞花を見守ろうと思った。一番傍に居なくたって良い、舞花の幸せを願って俺は見守ろうって。だけど…
「じゃあ好きになれよ」
いつまでも地に伏す事を許されない花びらを、掴んで手に入れたい。それはまるで子供の欲の様なものだけど、今の俺の気持ちは本当にそんな感じだった。
「今更そんなの無理だよ」 「じゃあ、俺が錫也を忘れさせる。だから、俺に委ねてくれないか?」
舞花の総てを、大切にするから。 そう言うと舞花は肩を震わせて泣いた。
百年の恋をも冷めさせてほしい
(縋ってごめん…そう呟くアイツ) (俺を選んだ事、後悔させないから)
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20120410
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