どうしてこの愛しさは消えてくれないのだろう
「錫也、はぐはぐっ」
手を広げて舞花が可愛くおねだりしてくるので、拒否する理由もなく抱きしめた。 ぎゅっと俺に抱きついてくる舞花に、心臓がぎゅーっとなる。
「どうした?なにかあったのか?」 「錫也が好きすぎてべたべたしたいの〜」
頬を擦り寄せて甘えてくる舞花。 頭を撫でてやったら、上目遣いで見上げられた。
「そのなでなで好きだなー」 「俺も撫でるのは好きだよ」
無意識の行動なんだけど、妙に安心してしまうのは撫でる側も同じだって知ってるのかな、舞花は。 だって頭って好きじゃなきゃ撫でられないだろ。 そういう言葉じゃ説明するのが煩わしい愛情に幸せを感じたりする。
「ねぇ錫也」 「ん?」
舞花がこうして俺の名を口にすることすら嬉しくて、自分の中に留めておけなくなりそうで怖い。 かなりセーブして舞花の愛に応えているわけだけど、本当はもう理性の糸が切れる方が早そうで、減るどころかどんどん溢れ出す舞花への想いがいつか、舞花を傷付けてしまいそうな不安を覚えずにはいられない。
どうしてこの愛しさは消えてくれないのだろう
(少しでも減れば) (俺も優しいままでいられるのに)
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20121005
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