彼女の恋を止める権利が誰にある
「私ね、今すごくしあわせ」
目の前で綺麗に微笑むのは月子ちゃん。 頬がうっすら紅潮していて、瞳は潤んで揺れたその表情には恋する女の子の言葉がよく似合う。
「よかったね」
なんてありきたりな言葉しか浮かばない私は滑稽な道化。 たった今片想いしていた彼と親友が結ばれた報告を聞いた、なんとも間抜けなピエロ。
「いかなくていいの?彼、待ってるんじゃないの?」 「あ、うん…舞花ちゃんにはどうしても報告しておきたくて」
親友だもん、って言葉が耳に刺さる。 うーん、今は正直その言葉は涙が出るほど辛い。 ちゃんと心からよかったねっていってあげられない自分が、嫌悪感で大嫌いになりそう。
「じゃあ行くね!また…」 「はいはい、のろけ話期待してます」
私の言葉に頬を染めながら微笑む月子。 うん、すっごく可愛い。 勝ち目なんてなかったんだなって思い知らされるくらいに。 月子ちゃんが去った教室のドアをぼんやりと眺めながら、私の中の行き場のない思いをどこに吐き出そうか考えていたら、廊下から哉太が入ってきた。
「不器用なやつ」
ドアを抜けて教室に入って一言、哉太は私にそう告げた。 なにもかも、見透かされている言葉だと思った。
「まぁでもさ、哉太だって同じことしたでしょ」 「………………」
哉太だってわかってるはず。 だって……
彼女の恋を止める権利が誰にある
(人を想うのは自由って) (きっと勝ち組の言葉だよ)
------------------------------------
20121005
|