君が僕に言うあいしてるの冗談に







「哉太、ほら…撮って撮って!」

青空をバックに、噴水の前でそうせがむ舞花をカメラのフィルター越しに眺めていたら、なんとも形容しがたい気持ちになった。
いつかカメラの中でなく、この腕に舞花を閉じ込められたら…そう思い始めてもうどれくらい経ったのだろうか。
その願いは叶うことはなくて、自分には舞花を閉じ込めておけるだけの力もなくて。
出来ることと言えば、こうしてカメラを構えていつか誰かの元へ去り行く舞花を見守ることだけ。

「ほんっと…情けねぇよな…」
「えっ、なに?」
「なんでもねぇよ。つーかポーズ作んな、俺は自然体が好きなんだよ」

なにそれ!と聞き返す舞花のむくれた顔を一枚パシャリ。
こういう、きっと恋人になったら気を使って見せてくれなくなるような表情を写すのが好きで、後で見返したときに自分の前では素を出してくれているのだという錯覚にクラクラするのが日常だった。
羊あたりに話せば、なにそれ気持ち悪いとか言われそうだし、あまりいい趣味ではないことは自覚しているけど。

「私、哉太がカメラ構えてるの好きだな〜」
「そうかよ」
「もちろん、哉太の事も愛してるよ!」
「……っ、ばーか!!」

不意打ちで告げられた悪戯な五文字に、思わずフィルター越しでなく顔をあげて舞花を見つめた。






君が僕に言うあいしてるの冗談に

(耐えられる理性が欲しい)
(これ以上俺をどうしたいんだよ!)

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20120922




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