確かなことは、彼が私を見ていないという現実







教室で受ける授業。学生の本業であり、避けては通れない道。
憂鬱だと思っていたそれは、星月学園に入って変わった。


「ほらー、席つけよー!」


明るくて元気な声。
この声を聞くだけで、眠たいはずの授業はワクワクする時間に変わった。
チョークが黒板を滑る音に合わせて紡がれる声。
たまに目が合うと、にっこりと微笑んでくれる貴方。
その度にドキドキしてしまう私。
これが恋なんだって気付くのに、そう時間はかからなかった。


「…じゃあ、今日はここまでな。復習忘れんなよ!わかんなかったヤツは俺のとこ来て聞くこと!」

短く感じる授業が終わって、クラスメイト達が散って行く中、陽日先生の元へと向かった。

「藤宮は真面目に授業受けてるのに、飲み込みが悪いよな〜」
「いつもすいません…」
「いやいや!俺ももっと分かりやすく教えられるように頑張るよ!」

そう言って笑う陽日先生の手元にある教科書をちらりと見れば、カラーペンやら付箋やらが沢山貼られていた。
教壇に立つ前にこんなに勉強してるんだ…って驚いた。

「さて、そろそろ片すか」
「あの…っ!陽日先生!」

そんな陽日先生の努力を目の当たりにして、普段見えない彼の魅力に触れてしまったからだろうか。
ふいに唇が動いた。


「私…先生が好きです…っ」
「藤宮!?」
「ぁ…いや、あの…っ!先生の授業が!好きです!」

つい本音が出てしまって慌てて否定。
やってしまったなーと思い陽日先生を見れば、ビックリした顔をホッとさせていた。

それを見て、気が付いた。






確かなことは、彼が私を見ていないという現実

(先生と生徒)
(この壁は近くて厚い)

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20120808




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