振り向いてくれないくせに、次の恋を邪魔しないで







「舞花、昨日寝るの遅かった?」

2限の授業が終わって席を立とうとしたら、錫也に声をかけられた。確かに昨日は、選択授業の課題がなかなか終わらなくて夜更かししたけど…

「どうして?」
「目、ちょっと紅いから。夜寝られなかったのかなって」

相変わらず鋭いなぁ、錫也は。
でもそれが彼の魅力であり長所であると断言してしまうのはきっと…

「次、選択授業だよな。眠くなって寝ないようにね?」
「分かってますよー」
「はいはい、じゃあ後でな」

言葉の終わりに、錫也は私の髪をくしゃっと撫でた。錫也にとっては撫でた、それだけのこと。私にとっては大きなこと。

「狡いよ…錫也」

思わせ振りなことしといて、本当は私をなんとも思ってないなんて。みんなの中の私でしかないなんて…
錫也の眼差しはいつも月子ちゃんに向いていた。分かっていたはずなのに、好きになった。






振り向いてくれないくせに、次の恋を邪魔しないで

(思わせ振りに優しくしないで)
(まだ、期待していいのかなって思っちゃうよ)

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20120613




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