負けないくらい思ってたのに
舞花の指にキラリと光る指輪。それに気が付いたのはいつだっけ? あぁ、確かあいつの誕生日の後だったか…曖昧にしか思い出せないほど、その指輪はしっかりと舞花の指にはまっていた。
「一樹会長と付き合う事になったの」
嬉しそうに報告するお前に良かったなと笑う俺。一体何がよかったのかわからないけど、口をついて出た言葉に舞花は満足そうに微笑んだ。
「なぁに、錫也」
指に見とれていたら舞花に声を掛けられた。
「なんでもないよ。綺麗だな、それ」 「指輪?」 「うん、舞花によく似合ってる」
褒めてやれば、少し恥ずかしそうに…だけど嬉しそうにする舞花。 俺が、ずっと手に入れたかったそれ。
「ありがとう、一樹さんがね…プレゼントしてくれたの」
聞けば、ペアリングではないらしい。なるほど、一種の拘束具のそれなのかもしれない。 そんな風に考えてしまう俺は、やはりどこかおかしいのだろう。
一樹会長と呼んでいたものが一樹さんに変わり、少しずつ舞花が彼に染められていく。 黙って見ているしか出来ない俺。
負けないくらい想ってたのに
(あの人に奪われ続けるくらいなら) (いっそ壊してしまおうか)
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20120504
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