なんて無謀な恋をする人







舞花先輩は要領が悪い。もっとうまく立ち振る舞えばいいのにと感じてしまう程に。
それは恋についても同じで、なんでわざわざ勝ち目のない恋を選ぶかなぁと思うような相手を好きになっていて。見目は悪くないんだし、男なら他にも…ほら、例えばここにいるじゃないか。そう思わずには居られない僕もまた、恋に関しては…いや、執着したものに関しては、驚くほどに不器用になってしまう事に気付いた。



「舞花先輩、そんなところでぼーっとしてたら危ないです」

階段を降る途中の舞花先輩を見つけて、彼女の目線の先に映るものを見て、僕は全てを悟ったけどあえて知らない振りをした。だって触れたら多分舞花先輩は傷付くから。

「ぁ、梓くん」

僕を呼ぶ声には力がなくて。本当に口をついて出た、という感じの言葉に僕は曖昧に笑うしかなかった。僕の目には舞花先輩しか移っていないのだけど、彼女の目には金久保部長しか移っていなかった。多分、今月子先輩といる金久保部長を見ても、舞花先輩には金久保部長しか見えていないのだろう。

どんな気持ちで二人が一緒に居るのを見ているのだろう、なんて野暮な事は考えないけれど、その目が少しでも僕に向けばいいのに…とは思う。だって僕はこんなに貴女に執着しているのに、僕を見てくれたら夢中にして離さないのに。

「…僕じゃだめですか?」
「え…?」
「いえ、なんでもないです。階段、降りてしまった方がいいですよ、そのままだと怪我します」

口をついて出た本音はきちんとは伝えない。でも、僕のその言葉が先輩の中のどこかで留まって、いつか…なんて月並みな瞬間を期待してしまう僕は他人事のようにこう思った。






なんて無謀な恋をする人

(まぁ無謀な、で片付けるつもりはないんだけど)
(必ず振り向かせます、だから今は傷ついて居て下さい)

-----------------------------------

20120414




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -