前途多難な恋心







『一樹かーいちょ』

ひょっこりと生徒会室に顔を出せば案の定一 樹会長が居た。

「お前なぁ、ちゃんとノックくらいしろよ」
『はーい!』

私の日課は生徒会室に来ること。だけど、生徒会役員じゃない。一樹会長が入学式で選んだのは月子ちゃん。まぁ、一樹会長は後から私を知ったらしいけど。

「お前もこんなとこに居座るなら生徒会役員になってくれてもいーじゃねーか」
『いやですよー。私は颯斗くんのお茶を飲みに来てるんです!』
「お前なぁ…」

そうは言うものの実際は一樹会長に会いに来てる。

私は一樹会長が好きだ。

一樹会長は月子ちゃんだけじゃなくて私にもとても良くしてくれる。

一樹会長の優しさに触れていたら好きになってしまった。

だけど、一樹会長が優しいのは私達だけじゃない。 それに、一樹会長の‘特別’は別に居るから。私が生徒会に入らないのはそれも原因だったりする。

『会長と月子ちゃんなんて…見たくない…』
「ん、なんか言ったか?」
『なんにも言ってません。それより、颯斗くんまだですかぁ?』
「今日は翼と颯斗は来ない。月子はもうすぐ来るんじゃないか?」




ズキッ



『な、なぁんだ!早く言ってくださいよ!じゃあ、居る意味ないし帰ります』

月子ちゃんと一樹会長は多分、両想い。 時間の問題。

「あっ、少しくらい手伝ってけって!」
『失礼しましたー』

これ以上居たくなくて一樹会長の言葉を遮るように生徒会室のドアを閉めた。






「おっ、姫はっけーん、くひひ〜」

帰る気にはなれなくて適当に歩いていたら幼なじみの変態に会った。

出会い頭にシャターを切られたのは言うまでもない。

『撮らないでって言ってるでしょ』
「くひひ〜、相変わらず姫は冷たいなぁ」
『桜士朗にだけだよ』
「酷い言い種だねー」

相変わらずな桜士朗に溜め息が出そうだ。てゆーか、出た。

『なんか用?』
「用なんかないけどそこに姫が居たからね 」
『あっそ』

そこに山があるからみたいな言い方すんな…

「あっ、そーいえば、一樹が今日も姫来るか気にしてたみたいだけど」
『生徒会室なら今、行ってきたよ』

ちょっとムッとして言ったら桜士朗がまたシャッターを切ってきた。

「くひひ、姫のその顔可愛いと思うよ」
『……変態』
「お褒めに預かり光栄です」

褒めてない…

『まぁ、さっさと出てきたけどね』
「なんで?一樹と居るチャンスじゃない」
『分かってないなぁ…今日は颯斗くんと翼くんが居ないんだよ?月子ちゃんと2人きりなのに…私は邪魔だよ…』

そう言ったら桜士朗が‘くひひ’って面白そうに笑った。

『なにがおかしいのさ』
「おかしいなぁ、今日は生徒会ないから1人で仕事片付けるって言ってたけどね〜」 『へっ?』

生徒会が…ない…?

『えっ?だって…えっ?』
「もう一度言ってみたらー、くひひ」

桜士朗が言い終わる前に私は元来た道を駆けていた。


(一樹会長!)
(うぉ!な、なんだ?!)
(あっ…えっと…あっ、と…す、少しだけなら 手伝ってもいい、ですよ)
(あ、ありがとな…?)
(くひひ〜、前途多難だね、こりゃ)
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相互記念に『星落ちた』の由奈様から頂きました!
私の大好きな桜士郎さんまで出していただいて…っ!
会長の月子ちゃんを見る目って、片想いの女の子には辛いと思います。
勝てる気しませんものね…
私の方も少しずつお礼の小説を執筆させていただきます!
由奈様、ありがとうございました!







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