貴方が居れば未来は薔薇色















「はぁ、……。」



とある日の昼下がり。私は大学近くのカフェの窓際で、独り深くため息をついた。隣の席では仲のよろしいカップルがきゃっきゃしてる。いつもだったら耳につかないそんな声も今は私のイライラの炎を倍増させる火薬でしかない。カラン、とアイスティーの氷が溶けた。






私は今年で大学を卒業する。来年からは社会人になる…はずだ。多分。こんな曖昧なことしか言えないのは、今若者たちがぶつかる就活というラスボスが目の前に立ちはだかってるから。


私の周りは職場が決まってきた人が増えてきた。私もこのくらいの時期までには決めたいなんて願望もあるけど今のところ叶いそうにない。


あーあ、お先真っ暗だ。


カラカラ、とストローでアイスティーを意味もなく混ぜる。



アイスティーを見つめながらまたため息をついた。







「ため息ばっかついてると不幸になるぞ。」



上から降ってきた言葉にゆっくり顔を上げる。



「一樹…」



そこには苦笑いしながら立ってる、我が彼氏がいた。







「そういやお前まだ決まってなかったな。あ、アイスコーヒー1つ。」



一樹は私の前にどっかり座ると近くを通ったウエイトレスを呼び止め注文した。



「しょうがないじゃない。ピンとくる仕事がないし…。そもそも仕事自体がない。てか、なんでここにいるの。 」



一樹は既に仕事は決まっていて残りの大学生活をエンジョイしてる。



「さっき道歩いてたら項垂れてるのが見えたから。ピンとくる仕事がない、か……。そんなこと言ってたらキリがないぞ。」



そのまま注文したアイスコーヒーに口をつけた。一樹の言うことは最もだ。でも、だからといって妥協はしたくない。





「そういうところは頑固だよなぁ。」



「だって下手したら一生働くんだよ?妥協なんてできない。」



私も氷が溶けて薄くなったアイスティーを一口飲んだ。





「あーあ。将来の夢は、幸せなお嫁さん!!なんて言ってた頃に戻りたい…。私の一生の夢だよ…。いいな、なりたいなー…。」



人間嫌なことがあると現実逃避するらしい。今の私とはまったくかけ離れた言葉を半ばやけくそに吐き出した。




すると一樹は少し考えるようにして私の目を見つめてきた。



「一樹…?」



問いかけると目線は外さないままゆっくりと口を開いた。



「…じゃあ、オレんとこに嫁に来るか?」



「…………え?」




突然なことに間抜けな声が出た。



「ど、ど、どしたの一樹?具合悪い?」



「いたって元気だ。」



そう言う一樹の表情は真剣そのもので、私は口をつぐんだ。



「…オレたち結構付き合ってるだろ?だからさ、大学卒業したらプロポーズしようとずっと思ってた。オレのこれからの人生にお前がいないなんてあり得ない。」



就活の話からふっとびすぎて頭が真っ白になった。



「ほんとは卒業してから言おうと思ったんだけどな。そんなかわいい夢聞かされたら、直ぐ言いたくなった。卒業したら、なんて言ってもまだお前を養うだけの力もないから実際に結婚は仕事が安定してからだけどな。 ………嫌か?」



何か言わなくちゃ、思考が鈍くなった私はこんなことを口に出してた。



「…リストラしない?最後まで、ちゃんと面倒みてくれる?」



一樹はキョトンとした顔になったあと、いつも見せるような自信に溢れた笑顔を見せた。




「もちろん、永久就職だ。手放す気もねえし、手放しもしない。幸せは保証するぜ?」



「…横暴。…絶対世界一幸せなお嫁さんにしてくれる?」



「あぁ。オレに不可能なことはない!」



「ふっ、なにそれ。」



「やっと笑ったな。」



一樹はここがカフェだとわかっているのか、身を乗り出して私の唇にキスを落とした。




「…公共の場でやめてよ。」



「お前はオレのだって見せつけてんだよ。」



「もう…。あ、お嫁さん以外に今もう1つ夢ができた。」



「うん?」



「会社をさっさと寿退社すること。だから一樹早くしてよ?」



「ははっ、お前も横暴だな。」



「誰かさんに似たのかもね。」







カラン、と音をたててまた氷が溶けた。






案外私の未来は明るいようだ。









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相互記念に夜空の散歩の花香様から頂きました〜!
タイトルは厚かましくも私がつけさせていただきました。
一樹さんかっこいいですよね…一生添い遂げたい…っ!
花香様のサイトの一樹さんは、なんだか可愛らしいんです♪
弄り方が可愛らしいというか…嫌味な感じではない弄り方なので読んでいてほんわかしちゃいます!
企画の方も凄く設定が面白いので、ご興味のある方はブクマより行ってみてくださいね!
小説ありがとうございましたっ!






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