「この15年、どんな気持ちで生きてきた?」

歳月が育てた罪悪の化け物はこうしてすくすく成長して、今じゃ170pのただの男の皮をかぶるまでになった。けれどこうして紡ぐ唇の動きは昔となんら変わりはない。変わってないだろ?なあ兄さん。俺はずっとこうして兄さんという言葉の響きを愛し続けてきた。兄さんと呼べば振り返ってくれるのがただ嬉しくて、何かと理由を探しては兄さん兄さんと発し続けてきたのだ。それを兄さんは、あなたはどんな気持ちで聞いていたのか。やめてくれ、と心中で叫んでいたというのか。黙れとごちてひっそり舌打ちを繰り返してきたというのか。どちらでも構わない、もしそれが空想の域を飛び出すというのなら俺はいくらでも事実を受け止めよう。兄さんだなんてもう2度と口にしないで生きていってやろう。けれど、けれどあなたはいつだって沈黙の化身であろうとする。唇を閉ざして、ただそれを三日月型に歪めるのみだ。俺はそんなあなたがひどく許せなくて、そしてそんなあなたをひどく愛していた。愛している。好きだよ兄さん。好きだから、だからいま本当のことを言ってくれ。そうしたら俺たちはついに本物の家族へ昇華することができるはずなのだ。さあ兄さん、…ユリウス、そのきちりとはまった手袋の中から覗く怒りで俺の頭を撫でつけてくれ。その三日月を貼りつけたまま俺を出来損ないだと罵り叫んでくれ。お前なんか、弟ではないと。慈しみ与える手のひらをいま、自己満足の獣へ変貌させてくれ。頼むから、なあユリウス、俺を責めてくれ。

「愛してるよ、ルドガー」
「もう、いいから、それ…」
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