少し入り用がありレイアに電話をかけて話をしていると、ふとGHSが鼻を啜る音を拾った。なんだよ、風邪か?そう気軽に言ってみると、あいつはぽろりと、それこそ涙をこぼすようにとんでもない爆弾を落としやがったのだ。

「泣いてたんだよ、さっきまで」


もうむちゃくちゃ走った。商人の職に専念し始めてからは、そりゃ体力的にもハードではあるが生きるか死ぬかの戦闘中のような動きはまったくしていない。しかし今回はもう、体が千切れて吹っ飛ぶんじゃないかというスピードで、生死さえ軽く賭けながらひたすらに走った。どうしてこんなに必死になるのかって、その理由は俺としても複雑怪奇だ。でも明確ではある。俺は怖いのだ、あいつの涙が。あいつが泣くたびに、俺は何故だかいつも責められているような錯覚をしてしまう。やっぱりほら、アルヴィン君のせいで何もかもうまくいかなくなったと、あの日の少女にそう大声で叫ばれている気がしてならないのだ。だから俺はあいつの涙を一刻も早く止めに行こうとしているわけである。つまり俺はいまあいつのために走っているのではなく、俺自身のために走っているのだった。やっぱ俺って屑野郎だと思うか。ああ、あいつに一発殴ってもらいたい。しかし今あいつは遠い彼方の地だ。自分でしっかり地に足をつけるしかない。保身のために進みつづける俺のツラを、せめてレイア、お前が思いっきりひっぱたいてくれ。この際グーでもいいぜ。
もうすぐあいつの住む場所へたどり着く。今からもう歯を食いしばり、顔を引き締めておいた。俺はこれからレイアに殴られに行くのだ。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -