「シンジくん、これは実に単純で理解の行き届く愛の行為だ。想いだとか恋情を認識したリリンがそれを愛情に変換する最も普遍的な衝動の実行法さ。生存本能の具現という見方が一番正しくはあるけれど、それは今の論点ではないからとりあえず置いておこう。さて、現在の僕の疑問を投げかけても構わないかい?僕はね、愛情としての意味を持つこの一連の時間を君と過ごせるだなんてとんでもない光栄だと思っているけれど、果たして僕ら2人の中でその概念は共通の条項と名付けても差し障りないものなのか、それはまだ明確ではないような気がしているんだ。シンジくん、君はどう思う?君はいったいこれを何と見ているのか、僕は今のところ認知していないのだけど。愛と見ているのか、それともただ抜け落ちた部分の情の代替として見ているのか。不思議とそれが僕にはとても興味深い。どうしてなんだろうね、シンジくん。…ああ、もうこの時間の擬似愛も終わってしまうんだね。なんだか無性に名残惜しいよ。この感情は寂しいと表現するのが適切なのかな。シンジくん、僕たちの間に成立するのが愛なのかは未だ不明だけれど、少なくとも僕の君に対する想いは確実な好意によって色づいているよ。これを覚えていてくれたら、それは僕にとって格別の喜びだ。それじゃあおやすみ、良い夢を」

そんなことを語りながらカヲルくんは僕の上ですこしだけ動いていて、僕がぴくりと跳ねるとしばらくぼうっと僕の顔を見つめていた。そうしてふと唇を重ねてきたかと思えば、彫刻のように静かに微笑んでゆっくりと部屋をあとにした。カヲルくんの言っていたことが僕にはよくわからなかったけど、僕たちの間にあるかもしれないっていうそれは、あるとしたらきっと愛に一番近いもの、それかカヲルくんの思っていたそれそのものなんじゃないかと感じる。どうであったとしても僕はカヲルくんが好きだし、カヲルくんだってこんな僕を想ってくれている。ならそれでじゅうぶんなんじゃないか、なんて。これはただの願いかもしれない。輪郭のぼやけた世界をなぞった僕はなんとなく天井を見つめて、しばらくの後ゆっくり瞼を閉じた。これはつまりそういう話だ。
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