「言うほどバッドエンドだったかなあ」
貸切状態の平日の映画館で、スクリーンを前にルドガーはそう呟いた。目前の大画面では背景の黒の上にエンドロールが延々と流れている。
「本人達が幸せならそれでいいと思うけど」
「お、意外だな。お前はこういう終わりには否定的だと思ったんだが」
「簡単に否定なんか出来ないよ。だって主人公はただ家族を守りたかっただけなんだろ?結果的に悲しい終わりになっちゃったけど、誰も間違ってなかったと思うし。うーん、やっぱり評判って全部鵜呑みにしちゃダメだな」
特徴的で寂しげな音楽が館内を包んでいる。どこかで聴いたことのある音楽だ。……なんて、ヘタな冗談だな。
「じゃあお前はこれをハッピーエンドだと思うか?」
「それも難しいなあ。そもそもハッピーエンドなんてあるのかな……」
ううん、と考え込んでしまった弟の横顔をじっと見つめる。スクリーンの光が瞳に映り不思議な輝きを生み出していた。影になったその顔に画面の中の険しさは塵ほども見られず、優しく柔和な雰囲気を放っている。再びスクリーンへ目を戻すと、相変わらず無機質な白い文字たちが上から下へと静かに駆けていた。何語だろうか、見たことのない文字だ。
画面の中の自分はこの終わりを何だと評しただろうか。最悪の終わりか、それとも最高の終わりか。すべてはそこに立っている俺自身でないと分かりえなかった。だが少なくとも俺は、今この胸の中に湧き起こる感情を画面の中のあいつも抱いているのではないか、とひっそり考えている。ルドガーにそれを言うつもりはない。弟の唸る声を横に聴きながら、背もたれに深く背中を預けた。ああ、ポップコーンでも食いながら観たら良かったかな。
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