「もううそはつかない」
「それもうそ?」

信じることをやめようとは思わない。けれど彼の言葉にいちいち感情を揺り動かされるのに疲れただけだ。彼が頷けと言ったから僕は何度も頷いたけれど、最終的には彼が首を振った。信じてくれと言われた分だけ痛い目を見た。愛しく想った分だけ傷を重ねた。それにもう疲れたというだけ。裏切られるのは1回で充分だったのにね。

「アルヴィン、信じてほしいの」
「…ああ」

信じてほしい、そう呟いた彼の瞳は真摯に僕を捉えていなかった。だめだなあ、そういうところがほんとうにだめ。ちゃんと目を見なきゃ。人に真正面から向き合うのがへたくそだからなかなか信頼関係が築けない。それは彼本来の性格ではなくて、幼い彼を取り巻く環境がそうしたことは知っているけれど。それでも彼は悪くないなんて台詞を口に出す気にはなれない。彼はこどもを見くびってしまった。非力で無知だと決めつけてしまった。どちらがこどもなのかも自覚できないままに。そうして向き合うことを怠ってしまったから、いまそうして後悔の念に苛まれている。自業自得、という言葉があるけれど、彼はいまその言葉の意味を痛感していることだろう。

「ねえアルヴィン」

俯いて立ち尽くす彼をそっと抱きしめた。驚いて硬直する体に宿る熱を感じる。大きな背中に手を回してそっと撫でながら、見た目ほど大きくないなあなんて考えた。ねえ、アルヴィン。僕だっていつも人には優しくありたいんだよ。こんなことを思うのはアルヴィンがはじめてなんだから。ああもしかしたら僕はもう信じることをやめてしまっているのかもね。

「ほんとうのことを言ってみて」


いまからきみを否定する
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