紅鮭 ココロンパネタ
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「じゃあ僕が宇宙人だったらどんなことだって話してくれるの?」
終一の目は月の光と見間違うくらいに鈍く明るく光って、薄暗いAVルームの中でよく目立っていた。おのずと光り輝く未知の生物、信憑性の薄そうなものならネットや雑誌の記事でよく見かける。UMAにもネッシーにも火星人にも関心は多分にある、それは男のロマンでありオレの未知だ。が、少なくともオレの助手の中にそれらはいないはずだった。ねえ百田くん、と終一の呟く言葉たちが、異国の言葉か何かに聞こえてくる。これは本当にオレの助手か、と一瞬だけ考え、それ以外のなんだっつうのか、とかぶりを振った。アブダクションされて細胞を異星人に入れ替えられたとか、王馬のヤツなら言いそうだがな。こいつはそういうキャラじゃない。
「そうだね」
宇宙人ドキュメンタリーのエンドロールの音に吸い込まれそうなほどの声で終一はそう呟く。オレはまだ何も口にしてはいなかった。その四文字の意味は何だ。オレがそう訊く前に、終一は喋りだす。
「僕は宇宙人じゃないかもしれないけど、それに近いことはできる。少なくともキミの未知には、なれるかもしれない」
まるで心でも読まれているような気分だった。こんなことを言うヤツだったか、最原終一は。助手のことなら大抵は理解しているとオレは思っている。だが今だけは光ばかりが邪魔をして終一の瞳の奥が窺い知れなかった。いつもどおりのオレより狭い肩に触れようとして、なんとなしに手を引っ込める。代わりに、終一、と目の前の助手の名前を呼んだ。
「たとえば、恒星だって自分で光る」
「うん」
「オメーの光はそういう類いの、理由と理屈の通ったモンだ。オメーは人間で、オレの助手だろ」
「でも根拠はない」
終一の目がまた輝きを増す。たとえ嘘であろうと真実であろうと、それは鋭い刃物に似て完璧に尖っていた。そうだ、オレはボスでこいつは助手だが、こいつは超高校級の探偵でオレは超高校級の宇宙飛行士だった。こいつの才能は、暴くためなら嘘すらつく。才能は他人に充分牙を剥ける武器だ、誇らなきゃ誰にも勝つことなんてできやしねー。そうこいつに言い聞かせたのは他でもないオレだった。オレは今、オレが鍛えたその才能で助手に牙を剥かれている。
「百田くん、僕はキミの未知になる」
「そうしたらキミの全部を話してくれるよね」
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