大事なものはたくさんあったけどほとんどなくしちゃったし愛してると言ってくれたひとは確かにいたんだけど顔を思い出せないし惚れた腫れたと騒ぐ前にみんなみんないなくなってしまったしああもう守るものなんてあったかなあと考え始めたらないような気さえ覚えたし生きてる意味さえ見つからないしであれれどうして僕は生きてるんだっけとなんとなしに思っては死のうかなあなんて漠然と考えてなんだかんだでやめようと思ってそれとなく生きてきた。なんだかよくわからないよ。そんな話を何度も何度も彼に話してごめんね変なこと言っちゃってと苦笑したら彼はお決まりのように君がそうやって心の内を吐露してくれることが僕はとてもうれしいから謝ることはないさと爽やかに微笑んだ。そしてそのあと僕らはなんとも言わずにお互いを見てなんとなくキスをする。なにげなく唇を離して彼はどうとも思わずこんなことをしているのかなあと薄ぼんやり考えたり。思考の波は寄せては帰り寄せては帰る。けっきょくたどりつく答えは彼なりのなぐさめだという現実的なものだ。いつもいつもこうして終わり。明日になればまた唇の感触なんて置き去りにして朝日の眩しさに目を細めるんだろう。夢程度の現実感しか持ち合わせないまま君とキスをした唇で拒否と逃亡の言葉を愛する。ねえなんだかさみしいよねカヲルくん。

「口がさみしいのかい?」

違うよカヲルくん、心がさみしいのさ。そう言葉を押し出す前に唇は塞がれた。
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