呼吸をするようにあなたを愛していけたらそれはとてもしあわせなことだなあと僕はよく考える。思考の海に沈めばいつもあなたがいて貝のように両手をひろげ僕を包みこんでくれるその温もりは何物にも代え難い僕の宝物だった。あなたが好き、きっとずっと愛してる。泡を吐けば彼の目尻に皺がよる。あなたは僕をしあわせにするのがとてもじょうず。なんて素晴らしいひとに出逢ってしまったんだろうか。

「だからねもしいま世界が終わってもしあわせなんです僕」
「えー俺はやだなあ」

自室のフローリングに尻をつけてもしもの終末を語る僕に、同じく尻をつけている彼はすぐ茶々を入れてくる。あたりに転がった空のワインボトルに映り込むその姿も相変わらず素敵だ。どうしていやなんですか、とつたない言葉を紡ぐまでもなく彼がそう言った理由が僕にはもうわかっていた。そう彼はこんなひとだ。

「俺にはまだまだやりたいことあるからなあ」

彼にはいつも目標がある。最高のヒーローになるだとか娘さんにかっこいいと言ってもらうだとか。大きなものから小さなものまで様々で、でもいつも共通しているのはそれを途中で投げ出したりなんかしないこと。僕はそんな彼のことを好きになった。だから「俺もそう思う」なんてちんけな台詞を並べ立てずにこう答える彼がたまらなく愛おしい。でもねやっぱり、やっぱりそうなんですね虎徹さん。

「やっぱりあなたの一番は僕じゃないんだなあ」
「わりいねバニーちゃん」

僕はこんなにもあなたを愛しているのにね。でもきっと僕を一番に愛するような虎徹さんなんかを僕が愛することはないんだろう。愛はいつも皮肉からできているものなんですね。
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