「うお!何だこれ!」
散歩から帰って部屋を見るなりモルガナは驚いた声をあげた。外に出る時にはなかったそれを不思議そうに眺めている。帰って来たときに驚かせようと思って急いで出したものなので、計画は無事に成功したようだ。
「炬燵だよ。そろそろ寒くなってきたから」
「コタツ……ああ、そういえばテレビで見たことがあるな」
興味深そうに炬燵の周りを回っていたモルガナは、やがて何かに気がついたように尻尾をピンと立てた。
「ってことは、中があったかいってことか!」
「うん」
外は寒いだろうと思って中はすでに温めてある。炬燵布団を捲ると、モルガナは喜びながら弾丸のように炬燵へと入っていった。直後、中から幸せそうな声が聞こえてくる。
「これはもう、楽園だぜ」
「喜んでくれて良かった」
捲って中を覗きこんでみるとモルガナはすっかり横になって悠々自適に温もっていた。隙間が空いていることに気づくと「早く閉めろ」と怒られたので大人しく閉める。
屋根裏にいたときは炬燵が出せなかったから、今年は絶対に出そうと決めていた。猫は炬燵で丸くなると言うけど果たしてモルガナも丸くなるのだろうかと気になっていたし、何よりモルガナが知らないことを教えてあげたかった。今までいろんなことを教えてくれたモルガナに、今度は俺がいろんなことを教えてあげられたらいい、と思う。
窓の外では幼い頃から庭にある大きな木が枯れ葉を身に纏っていた。きっとそれももうすぐ地に落ちて、木は裸になり雪はまばらに積もる。そういう景色を何度も繰り返して日々はこれからも過ぎていくのだろう。考えるたびに胸がどうしようもなく痛くなった。べつにモルガナが人間になれないなんて考えているわけじゃないのに、窓が白く曇ることひとつくらいで悲しくなる。俺はあと何回くらい、モルガナのために炬燵を出してあげられるのだろう。
「オマエも入れよ。足冷えるだろ」
「……うん」
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