凝りきった肩を解すため、腕を上げて大きく伸びをする。首をぐっと逸らすとどこかの間接がぼきりと鳴るとともに目には天井の梁が映った。といってももう真夜中だ、ランプの灯りにのみ頼る視界にとって周囲はほとんど闇で、普段以上に辺りはよく見えない。腕を下ろし肩を手で揉みながら、薄ぼんやりと色のついた散らばる紙束たちを見下ろす。まだやることは残っているけれど、睡魔はぼくに寄り添っている。こんなとき彼女がいれば、ご無理は禁物ですなんて言ってぼくを叱ったのだろうか。淡く灯るランプの光を見つめていると、ぼくの目前に立ち腰に手を当てる澄んだ瞳をどうしても思い出してしまう。
そういえば前に、ぼくがとうとう布団までたどり着けず机に突っ伏して眠ってしまったことがあった。寝心地はあまりにひどく朝起きたら全身の骨が痛かったのだけれど、冬の朝だったというのに寒さはさほど感じなかった。それはいつの間にかぼくに掛けられていた厚手の布に起因していて、薄桃に温もったそれはまさしく彼女の優しさだった。異国の地にいる自分は、しかしひとりではないのだと感じた。とても些細で、大切な出来事だった。
また会えるといい。いや、会うはずだ。いつかぼくはダルマを抱えて久々に会う彼女に笑いかけて、「ここに目を入れてくれますか」と告げる。彼女は、寿沙都さんはそのとき、はいと言ってくれるだろうか。 言ってくれるといい。そう在れるよう、ぼくは進まなければならない。
立ち上がってもう一度伸びをする。ランプを消して、布団へ足を向けた。おやすみなさいと言っても返事は返っては来ないけれど、今はそれでいいと思った。
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