学友もとい相棒の腹に跨がり、うす赤い頬を見下ろす。洋灯の灯りが控えめに男の輪郭を浮かび上がらせ、差す影をより濃く深めていた。男の肩に手を置き、力を込める。揺れるそれは言うまでもなく期待からの反応だ。此方を蛇の如く見据え、蜜めいた眼光を尖らせている。面白い、と心中で嘯き、肩に在った手をその胸へと滑り下ろした。指に沿ってシャツの白に皺が寄る。胸板の中心から降りさせるそれを、丁度臍の辺りで止めてやった。成歩堂の口から熱い息が洩れる。
「やけに、焦らすな」
返事はくれてやらず、臍の周りをくるりと人差し指に回らせる。朧な双眸が揺らぎ、眉が寄った。上体を倒し、耳に唇を近づける。
「脱がせてやる」
顔を離す直前に息を吹きかける。頬がより赤く色づいた。それで良い、嗚呼、愉快だ。体を起こし、シャツの釦に手を掛けた。上ではなく一等下の丸い穴から釦を解放してやると、服越しではない臍が露わになる。薄らと割れた腹をなぞりつつ、次の釦を解き放った。目に触れる肌色の面積が増す。わき腹を撫でると、ふふ、と成歩堂がちいさく笑みを洩らした。擽りだとでも思っているのだろうか。色気の無い、と考えつつ、手を滑らせる。シャツの下へ指を滑らせ、胸の突起を手のひらで覆った。笑みに染まっていた表情が途端に緊張の意味を孕む。
「まだ、釦、三ヶも残ってるけれど」
苦笑を一瞥しながら、手のひらで突起を転がす。指に引っ掛けて撫でさすると、切なげなおもてがひとつ現れた。指で弾けばちいさく喘ぎが紡がれるとともに欲情の炎が理解りやすく其処に灯る。
「亜双義」
そろそろ、と男が呟いた。言葉に遅れて、太腿に手が這わされる。控えめで在りながら大雑把な『急かす』動きだった。布越しで艶めかしく皮膚と感情の表面を擦られる。熱を調節するべく息を長く吐いた。どうにも熱い。その手に自らのものを重ね、手首を爪で掻いてやる。
「そろそろ、何だ」
「……おまえでも分からない事ってあるんだ?」
「オレを過信するな。言葉を使えよ」
見せつける為、己の唇を舌で濡らす。狙いどおり喉を鳴らし緊張を張り詰める親友は、先刻から猛りを隠そうともしない。オレの丁度尻の下で蠢く熱を何度も宛がい押し付け、擦りつける。視線が無言の交錯を果たす。場さえ見やれば静寂であろうと、眼差しでは互いの性を乱暴にぶつけ合っていた。何もかも全て手に取るように分かる、この男のこうべの中でオレは既に犯されている。どうしようもなく持て余された欲を咥え込まされ、無遠慮な揺動を強いられている。
「……そうだな、先の言は失言だ」
この場で言葉など、あまりに無粋か。呟き、顔を近づける。覗く赤に同時に誘われ、舌を絡め合わせた。口内の何処も彼処もが熱い。溢れる唾液には構わず、心ゆくまで友を食んだ。やがて一旦口を離し、成歩堂の火照る頬を手のひらで包む。
「灯りを消すか」
問うた後に成歩堂は「ああ」と零したかと思えば、すぐに俊巡するように視線を泳がせる。しばらく口ごもったのち、遠慮がちに口を開いた。
「その、つけたままじゃあ、いけないか」
「ほう。……助平め」
「おまえには負けるよ……」



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