腹を食い破るような感触に思わず目を見開いた。視界がちかちかと点滅する。吐きそうに重い。いや、痛い? なんだろうか、この、今までに感じたことのないような感覚は。足元がまるごと掬われるような、いっそ希望にも似た、光。
「……成歩堂」
成歩堂。何度もぼくの名を呼ぶ声。ああ、わかる。亜双義だ。ぼくの親友。ずいぶん穏やかな声をしている。何か楽しいことでもあったのか、亜双義。顔を見せてくれ、今とても不安なんだ。
「誓え」
「今ここで、すぐに。唯オレ一人と交わり混ざり、一生離れないと誓え」
矢継ぎ早に言葉を繰り出す。待ってくれ。どうしてだか、うまく喋れないんだ。呼吸が苦しくて。声にしようとしても、ひゅうひゅうと掠れた吐息しか出やしない。ぼくが何も言えずにいると、亜双義は少しだけ眉間の皺を深くした。誓えんのか、と。地を這うような声。体の中を冷たい何かが通り抜ける感触があって、腹に感じる重みがより大きくなる。口からは赤い液体が吹き出た。
「オレ達は共に在るべきだ」
混ざり合おう。雑ざり遭おう。地獄の果てまで、永久に。亜双義はぼくをそっと抱き寄せ、耳元で何度もそう囁いた。そうなのか。ぼくたちは、交ざり逢うべきなのか。ぼくにはわからなかった。わからないけれど、ただ信じることはできた。
「亜双義」
「おまえとなら、いいよ」
なんとか絞り出した声は、果たして亜双義に届いただろうか。きっと届いたのだろう。あいつは今まででいちばん優しく微笑んで、ぼくの腹の根本まで誇りを突き刺した。潰すように抱き締められ、愛していると告げられる。視界がぼやけていく。亜双義、いいよ。おまえとなら混ざり合って溶け合ってどろどろになってしまったって、いいのだ。
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