「おまえの背中を見ていると、なんだか安心するよ」
いつだったか、キサマはオレにそう言った。単純に喜ばしいと感じたことを覚えている。
そういえばいつもオレばかり先を歩いて、キサマはオレの後ろを不満も言わず着いてきていたな。果たしてオレが生き急いでいたせいか、キサマが暢気だったせいか。今となってはもはやわかりはしない。しかし、後ろから着いてくるあの軽やかな足音は、オレの一種の楽しみだった。
相棒よ、よく聞いておけ。オレはこの道を降りる身だ。これからは、キサマがオレの先を歩まなければならない。オレに背を向け、道しるべもないままにその足をしっかりと前に踏み出してゆかなければならない。オレが示し導こうと約束したその道を、キサマは自らで歩んでいかなければならないのだ。オレはただの人間で、存外無力だった。印にと置いた未来をこの風で浚った。許せなどと言えはしない。死人の口には悔恨が詰め込まれるばかりだ。
それでもキサマはオレの意志を継ぎ、オレの魂をその体に帯びた。ああ、成歩堂龍ノ介。キサマはそういう男だったな。
男の背中は少しずつ遠ざかっていった。刀、なかなか様になっているじゃないか。目を細めながらその姿を見つめるうち、自然と笑みが口から漏れ出る。見慣れないその背は、思っていたより広くたくましく感じられた。
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