亜双義、と名を呼ばれるたび胸の底に花が咲いた。そのきらきらと押し付けてくるかのような光を見るたびてのひらがむずがゆくなった。そういうものすべてひっくるめて、オレは友情と呼んでいた。成歩堂龍ノ介をオレは友として誇らしく思っている。それは向こうも同じなようで、わざわざ言葉にしてまでそう伝えてきた。良い関係だと、我ながらに思う。まっすぐで健やかな友情だ。だからオレは成歩堂龍ノ介に対して抱く想いすべてを、友情のくくりに放り込む。ほかには何も存在などしないのだと思考しつづける。
「亜双義、いつにも増して難しい顔してるぞ」
「……そうか?」
その瞳は今日もオレを見つめる。オレのすべてを暴くかのようにぐりぐりと動く。この目だ。これが、どうにも厄介なのだ。コイツの瞳に映る自分自身の顔を、どうしても見なくてはならない。 成歩堂の目の中に映るオレの顔は、平生で見るそれより少し違って見える。親友に対して向けている瞳として果たしてこれで合っているのか、わからなくなる程度には輝いている。視線を向けられている当の親友は何も気づいていないようだが、自分自身でははっきりとわかっていた。
オレは成歩堂龍ノ介に友情以外の想いを向けている。それは紛れもなく、逃れようもない事実だった。何度否定しようと、積もっていく感情にはきりがない。このままではいつか破綻するときがくるかもしれない。けれど、そうだとしていったいどうする?世間体など気にはならない。だが、ヤツが同情心からオレの気持ちを尊重しようなどとした場合、苦しむのはヤツだ。
(じゅうぶん、友情で事足りている)
だから何も望みはしない。こんな想いは墓場まで持ち込んでやればいい。そう思考していながら、オレは今日も親友のうなじを網膜を焼ききるかのようにじっと見つめつつ、よこしまな想いを胸に宿らせている。ああ、とんだお笑い種だ。いっそキサマがオレの泥濘を笑ってみせれば、少しは見れたものになるというのに。いつまで経とうが波は静まらないのを、オレはすでに自覚していた。
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