ED後
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「きれいだね」
最近ミクリオはオレを見るたびにそんなことをよく言ってみせる。けど、その言葉に自分はあまりに不釣り合いだと普通に思う。きれいだなんて他の人には言われたことがない。かなり調子が狂うからやめてほしかった。やめる気はどうやらないらしいけど。
ベッドの上で、ミクリオと寝ころびながら夜に身を置く。窓の外から見える星があんまりにもきれいで、今でもはっきりと思い出せるいつかを重ねた。小さな光が懸命に輝く様はいとおしくさえある。ミクリオは窓の外には目をやらず、ずっと隣のオレを見つめていた。まるで何かを探すように。
「きれいだ」
また、そんな言葉。ミクリオの口から発せられると、余計宝石箱みたいに光って聞こえる。オレをじっと慈しむように定める視線が、とてもくすぐったい。
「きれいじゃないよ」
ちょっと笑いながら否定する。きれいだなんて、わざわざオレに使わなくてもいいだろうと。だけどミクリオはちいさく首を振り、オレの頬に手を添えた。形を確かめるように動くそれが、頬から耳をなぞる。次に髪を指で優しくといた。その一連の動きがあまりにも愛情に溢れているように感じて、急に恥ずかしくなる。ミクリオはこんなに、オレのことが好きだったっけ。
「君はきれいだよ」
囁くように言葉は紡がれる。溶かされてしまいそうになるのが怖ろしい。ミクリオの瞳に星を探すと、それは数億の輝きをぴかぴかとオレに放っていた。
きれいなのはお前のほうだ。ベッドに散って流れるような光を纏う髪や柔らかく動く唇、昔より大きくなった両手と凛々しく星を宿す瞳。どこを見たってどきどきする。今のミクリオはすごくきれいだ。ほんと、きれいになった。
なおもきれいだと囁かれるぬくもりの中、優しい手はオレを眠りにいざなっていく。その手に自分のそれを添えて、おやすみ、とつぶやいた。
「また明日」
そう言ったミクリオの細められた瞳がまた光る。夢の中まで、この美しさを持っていこう。そう密かに誓った。
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