ループ中足立+共犯者エンド足立
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間の抜けた目が誰かを見つめている。灰色の視界が映し出す世界の中心に立っているそれにはなんだか見覚えがあった。ていうか、僕じゃないの?ああ僕だな。乾いた笑いを乗せて相手を睨みつけると、そいつも鏡合わせのように口元を歪めた。我ながら性格の悪そうな笑顔だなあと思う。
「バカだなあ、お前」
奴は僕にそんな言葉を投げてきた。何を言うかと思えば、自虐かよ。お前は僕の鏡なんだからさ、バウンドした言葉に突き刺さって死ぬのはたぶんお前のほうだというのに。ただの笑みを嘲笑に変化させると、そいつはまたおんなじように僕をあざ笑う。
「あんなに便利なやつ手放すなんて、もったいないことしたよなぁ」
「へえ、彼便利なんだ」
「すごい便利だよ」
ここでそいつはズボンのポケットから携帯を取り出し、ボタンを4回ほど押してみせた。すると、3秒も経たずに彼の焦った声が飛び出してくる。スピーカーモードに切り替えられた音声機能は、その声を正確にこっちに届けてきた。
「もしもし、足立さんですか?何かありましたか?あの、俺いま遠出をしているのですぐにそちらには行けないと思うんですが、30分程時間をもらえれば必ず間に合うので、あの、待っててください、その、嫌いにならないで、」
ぶちっ、と、ここで音声は途切れた。奴が通話を切ったのだ。
「ね、電話かけただけでこれだよ?彼都合良すぎるから何回も呼び出しちゃっててさあ、だからもう電話イコール呼び出しって染み着いちゃってんだろうね。ハハ、滑稽」
「……ほんと滑稽だね」
落ちぶれたか、あのクソガキは。そして落ちぶれさせたのはこいつか。本当に滑稽だ。正気を取り落としそうになる。僕はまだ逃げていた。あいつの歯車は、きちんと噛み合ったままだ。歯ぎしりが止まらない。
「あいつは僕にとって害虫だ」
「その通り。いつかは捨てるさ」
「ハハ……」
なんだかな。笑えてくる。果たしてどこをどうすればよかったのか。何をどうすればいいのか。こいつはたぶん、「失敗」のほうの僕だ。けれどこいつはまるで自分を「成功」であるかのように存在しようとしている。では僕は今、何として存在しようとしているのか。
「お前にとって彼はなんなの」
「ん?あー、そうだなあ……」
共犯者。そう言って、奴はにたりと笑った。共犯者。なんというおぞましい響き。鬱屈した感情を当てはめた僕は、霧の中にそれを無造作に放り込んだ。ぽちゃんと音を立てたのは、ライターか?
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