「あなたでなくちゃ駄目なんです」
そう言ったガキの瞳が輝きで死んでいた。あなたでなくちゃ駄目、ってね。バカバカしいし陳腐。なんだかなあ、ホモでもないのにこんなとこまでストーカーされて、でも今の僕にはもうこいつぐらいしか傍にはいないだなんて。なんかすごい虚しくなってくるよなあ。結局ここまでってことだ。自分の力量ぐらいきちんと理解できている。彼の彼女も彼女の彼も、皆特別を作る才能があったってことなんだ。その点僕は、ホモに追い回される才能しかなかったってことさ。あー悲し。けど目の前のこいつは憎たらしいことに様々な才覚の芽を俺に見せつけてくるというのに、なんでこんな辺鄙なとこに来ちまうのか。わっかんないなあ。
「聞いていますか。俺は今、あなたでなくちゃ駄目だと言ったんですよ」
「聞いてる聞いてる。だからスルーしてやったんだよ」
「……あなたは俺の特別です」
クソガキの、刀の柄を握る手に力が込められていた。人と戦うのは怖いか。人を殺すのは怖いか。直には僕もやったことないからよくわからないけど、そんなに怖いなら無理してやらなくていいのにな。うちに帰って家族と一緒にあたたかいご飯を食べなよ。今ならまだ、仲間のもとにも戻れるだろう。君の臆病な部分を僕はおそらく誰よりも知っている。だから忠告してやりたかった。彼を憎んでみてから、彼のことがとてもよくわかるようになった自分がいる。もしかしたら僕にとっての君も特別ってやつなのかもしれないね。いないに越したことのない、僕の敵よ。
「俺が俺であるためにあなたはなくてはならない」
「うわあ、自分本位!君って実はモテないんじゃないの?」
「あなたさえ捕まえれば、俺は胸を張ってあなたと生きることができるんだ」
話聞けよ、と心底思う。しかも言葉は支離滅裂だ。呆れて物も言えない僕を見て、彼は何故か無理矢理に笑おうとした。だからやめとけって。
「ていうかさあ、さっきからあなたあなたって、君、人の名前わかってる?」
「え?」
首を傾げた彼を見て、俺はなんだか笑えてきた。結局俺じゃなくてもいいんだよな。いつだったか俺がそう言ったとき、こいつはどうでもよさそうな顔で俺の名前を呼んだっけ。
「あなたは、……あなたでしょう」
「はずれ」
バーン!
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