ED後っぽい
※FES未プレイですすみません
※順チド前提の友情
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「お前好きなヤツとかいんの?」
「いるよ」
「うおマジでか!誰だれ?」
「さあ、誰かな」
「…あー、まさか言いたくない系のやつ?」
「そうだねえ、少なくとも順平には絶対言わないかな」
「な、なんだそれ」

後になって思い返すと、そんな会話の中にもけっこうきらきらしたものは隠れているのだと感じた。砂の中のガラスみたいなちょっとばかし危ないけど、でも特別きれいに光ってるものだ。あいつの笑い方が一種類しか思い出せないのは、そのきらきらにほとんど打ち消されてるからなのか、もしくはオレがただ光ばかり見ていたのか。さあ、わかりはしねーもんだが、それにしてもオレにとってのあいつの笑顔というのは、いつも屈託なく強いものだったなと思う。女の子なのにな、なんか、頼りがいがあるというか。かっこよかったものだった。あいつ自身はまるできらきらの集合体だったのだ。

「順平」
そんなことを思い出していたからだろうか、今朝オレはあいつの夢を見た。誰もいない図書室で、開けた窓から入る風に髪を揺らしながら、あいつはオレに勉強を教えていた。たまに大きくなびいてあいつの顔を隠してしまうカーテンが邪魔だななんて思っていたら、問題集に視線を落としていたあいつは不意にオレをあの赤い瞳で射ぬいて、それから笑った。やんちゃ坊主みたいな顔で。でもどこか、オレを認めるような、許すような感情を含んでいたように思えて、見ているだけで不思議になるような表情で。そして、その笑顔から目が離せなくなってしまったオレに、あいつはまるで遊びに誘うときのように言ったのだ。順平。そう一言。なんもかんも全部、きらきらしていた。
「……何かねえ」
もう一回会いたいとずっと思っていたが、こんなマブシイ感じで夢に出られるとさらに会いたくなってしまう。オレお前に話したいことがけっこうあるんだよ。あのあとチドリも無事に過ごせてて、今は二人で支え合ったりしてうまくやれてる、とかさ。他の奴らもそれぞれでなんとかうまくやれてるみたいだぜ、とかさ。なんかもー他もいろいろあるんだよ、いやマジで。次もお前の夢見れたら、そのいろいろを全部話したいんだ。ただ、オレがお前を見てるだけじゃなくて。まあオレ次第なんだけど。
そうやってセルフ心中語りをしてる間にも時間は過ぎていくもんである。つか遅刻じゃね、ヤバくね?あいつが見てたら絶対からかってくる。とりあえずでかいあくびをひとつしてから、目尻を拭って服を手に取った。日常に帰るみたいだ。


「順平」
マジかよって感じ。二日連続で夢を見るとは。会いたいと願った女の子が目の前で笑っている。
今日の夢の場所は昨日とは違い屋外、さらに言うと海だった。オレとこいつはテレビでよく見るまったく汚れのないマリンブルーの浅瀬に足を浸からせている。浜辺の近くには洞窟があって、遠くにちいさな船が浮かんでいた。ユートピアよろしくなトコですこと。
「何ぼーっとしてるの、っと!」
ばしゃっ!と冷たい水をかけられた。ガードする間もなく顔まで濡れてしまう。
「…やりやがったな、オイ!」
仕返しにとこっちも全力で波を掬い上げて向こうに返すと、あいつはキャーとかヤメテーなんていう甲高い声をあげながらも実におかしそうに笑っていた。まるで全部懐かしい。あいつの口は減らないし、オレだってずっと笑いが絶えない。太陽の反射する海面は眩しく光っていた。眩しいわけはきっとそれだけじゃないんだけども。
「なあ、オレっちさ、お前に話したいことめちゃめちゃあるんですけど!」
「私に勝ったら聞いてあげる!」
「なんだそれ!何を勝ち負けとするのかわかんねんッスけど!」
ばしゃばしゃばしゃばしゃ、高校生が何をこんなにはしゃぐことがあるんだろうか。でも楽しくて仕方がない。いま写真が撮れないのが悔やまれる。このきらきらだとか、お前とはこうして遊んでたよな、みたいなこととかね。一生忘れたくないのになんの思い出も残せない、残せなかった。つうかだってこいつめっちゃ美人なんだけど、こんなもんだっけ?記憶がウソつき始めてるんじゃねーの?
「お前、今めちゃキレーだけど、これってオレの思い出補正ー?」
「バカだな、実物はもっときれいだったじゃない!」
「あー、そういやそうでしたー」
どうやらマジもんはこんなもんではなかったらしい。いやイカンね、やっぱ記憶が古びているのかしら、っつって。あの言い草に意味もなく安心してしまう。
水をかけあう手はまだ止めていないが、それでもまったく疲れない。ああ夢だな、実感すると異様に物悲しくなる。
「なあオマエさ、けっきょくオレのこと好きだったわけ?」
「順平が勝ったら教えてあげる!」
「またそれかよ、ったく!どうやったら勝ちなんだよー!」
ヤツはにやにやといたずらっ子のそれで笑うのみである。オレもつられて笑えてくる。波立たない向こう側に物言わぬ水平線が横たわっていた。太陽はなんだか夏らしく世界を照らしていて、オレは日焼けするかも、なんてのんびりと考えている。船はべつに近づくわけでも遠ざかるわけでもなくずっと果てのほうに浮かんでいて、なんだかな、日々に隠れそうになっていたなにかを思い出した。ああびっくりするほど全部きらきらしてたぜ、きっとオマエのおかげなんだろうな。


BGM:渚(スピッツ)

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