15話から派生
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これは誰のお葬式なのですか。道行く人のひとりがこちらを指差してそう言った。これはヒーローの、ワイルドタイガーのお葬式です。僕はそう答える。すると質問をしたその人は興味なさげに知らないなあと漏らして、さっさと人混みに紛れていってしまった。しばらくそれを見送ってから、僕は棺桶を開けて白い花を彼の体にそっと乗せた。忘れませんように、どうかこれ以上誰も彼のことを忘れませんように。静かにそう祈る。すると周りにいたヒーローたちも彼の肢体に花を手向けていった。ある者は涙して、ある者は悔しそうに唇を噛み締めて。これは誰のお葬式なのですか。また通行人が問いかけてくる。これは、ワイルドタイガーというヒーローのお葬式ですよ。そう言うと、通行人はああ、と声を発した。あのワイルドタイガーですか。通行人はまた問うてくる。はい、あのワイルドタイガーです。あなたは彼を覚えているのですね。平静を装いながら僕は答えたが、どうしても声が震えてしまって、気づかれていないようにと胸中で願をかけた。忘れられませんよ、あんな無謀なヒーローは見たことがありませんでした。こっちは助けられる側なのに、思わず助けに行きたくなるようなダメなやつでしたね。溜め息混じりにその人は言葉を紡ぐ。しかしそのあと、優しい顔つきと声色で、ほろりと言葉を落とした。でもやっぱりいなくなると寂しいものですね、と。それだけ言い残してその人はここを後にした。去っていく足音に断続して聞こえる聞き慣れた足音。あの靴がアスファルトを蹴って、僕らにたどり着く。なあその死体、俺のなんだよ。彼は言った。ええ知ってますよ。僕も言う。ねえ知ってましたか、あなた愛されてたんですよ。僕が言ったら、あなたは知らなかったかも、と照れくさそうに笑った。今日はワイルドタイガーのお葬式、参列者は僕たちヒーローと虎徹さん、あなただけ。僕は相棒として、あなたの最後を見守りますよ。呟くと、最後まで傍にいてくれてありがとなと彼は笑った。
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