「俺お前とならわりとガチで結婚してもいい」

つって、ね、ほらアレだよ、飲み屋特有のテンションっつーの?アルコール入ってるが故のバカっつーの?そういうアレが爆発して、俺はついレイアにそんなことを言ってしまったわけだ。そして言った直後にレイアが飲んでいたのはただのオレンジジュースであったことをふと思い出した。まあ未成年だからそれが普通さ。しかし、そうだよ、こいつ今まったくの素面じゃん。酔ってんの俺だけじゃん。俺が今言ったことこいつ普通に覚えてるじゃん。そう察した瞬間に俺の酔いはほぼ醒めてしまった。つか、一番おかしいのは内容だよ。27歳が16歳になに求婚まがいのことしてんだよ。捕まってもおかしかねーって。ヤバいもうマジで、マジでもうさ、なあ早くなんか言ってくれよレイアちゃん!

「アルヴィン」

口に運んでいたオレンジジュースを静かにテーブルに戻したレイアは、感情を映さない瞳で隣に座る俺のことを見据えた。あ、どうしよう。なんか変にドキドキしてきた。もし、もしだけど、レイアが俺の言葉に対して肯定的な答えを発したら。わたしもそう思ってるよ、なんて、もしこいつが言ったら。死にそうなくらいヤバい。想像だけで口元がすげーだらしなくなる。けど、それと同時に苦しみも胸を襲った。レイアの背中にはおそらく一生消えることのない傷跡が残っている。それは紛れもなく俺がつけた傷で、その傷はこの先ふとしたときなんかにレイアを苦しめていくのだろう。だからもしレイアが俺と結婚してもいいと言ってくれた場合、俺は世界の中の誰よりもレイアを幸せにしなくてはならないと、そう思うのだ。レイアの背負う苦しみを俺が一緒に背負っていくということの意味、それはつまり、俺が一生をかけて罪を償っている様をレイアに監視してもらうということだ。そこまでの重さを、果たして俺は背負えるのだろうか?レイアの苦しみに寄り添い、なおレイアに償っていくことを俺ができるのだろうか。酒の味がよくわからなくなってくる。
しばらくの沈黙を置いたあと、レイアはにこりと笑った。まるで聖母だ。お前そんな顔もできるのかよと俺が思った瞬間に、レイアはぽつりと、俺にこんな判決を下した。お前これから先絶対モテるよ。

「気持ち悪い」
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