わあきれい。あいつはさっきまで俺の体内に眠っていたキャベツを見てそう言った。あーそうか、夏だから。頭沸いちゃったんだなこいつ。あいつはもっとちゃんと自分の目で見たいなあとか言ってかけていた眼鏡を外そうとしたが、僕はとっさにやめときなよ、と声をかけた。フレーム越しでないままあいつの目を見るのはちょっと、いやかなりキツいと思ったからだ。あいつはふっと動作を止めて、しばらくしてああとかなんとか呟いたあとぽっつり頬を染めてわかりましたと言った。絶対何か勘違いしたぞコイツ。そうですよね、眼鏡かけてる俺ってかっこいいから…という独り言がまさにそれを物語っている。癪に障るガキだ。この銃で撃ち抜いてやれればどんなにいいか、と日頃丁重に仕舞い込んでいる銃の所在を探る。が、ない。ん?おかしいぞ、朝はあったよな。あれ、あったっけ?えーと今日の朝は…ダメだ思考回路がうまく回らない。脳のネジがいくつか抜けてしまってるのかもしれない。ここ、テレビの中に引きずり込まれてから視界はぼやけているしこのクソガキの笑った顔は異常に不愉快だしで多少おかしくなってしまっていてもまあ仕方がないとは思うが。ああ、地面に膝をつく僕の真横にはなぜかあいつのものらしき刀が。今の状況でなら喜ぶべき貴重な武器ではあるが、掴み取る気にはあまりならなかった。だってこれはコイツの所有物であるわけだから、なんだかもう触るのもちょっといやだ。どうしようかなあこれ。俺、あーいや僕は地面を小さく蹴りとりあえずはははと干物のように笑った。そうするとあいつは途端に花が咲いたような笑顔を作り、あはっつって制服から銃を取り出す。ごく自然な動きで、である。確実にそれは俺の銃だった。はは、あーはははみたいななんだか愉快な笑みを繰り出し俺は刀を手に取ったが、それは少し遅かったようだ。あーだちさん、て猫なで声で俺に向かう奴は、今から死ぬんじゃないかってくらい幸せそうであり、そして悲しそうだった。さてここは世界の片隅、2人っきりだね、そういえば。救済策なんて謳う歌謡曲を君はどうやら奏でていたようだ。俺は知らずに音の外れた交響曲を朝のアラームに設定し、世界と愛をただのドブだと切り捨てようとしていた。ねえ君ってそれで幸せなのかい?つってね。ハハハ。

「足立さん、それではまた次の春にお逢いしましょうね!ぱーん!」


BGM:パッション・フルーツ/フジファブリック
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