(七瀬視点)
「優勝は立海大附属高校」
アナウンスが響き渡り、会場に残った人々の拍手が聞こえてくる。
優勝杯を受け取る幸村と、表彰状を受け取る真田。
横一列に並ぶレギュラーのみんなをみて、何故だかこっちまで誇らしくなった。
見ててよ、俺のテニス。そう言った彼はその言葉通り、彼のテニスで優勝を勝ち取った。
その時の彼の後ろ姿を思い出していた。
マネージャーである自分たちは、彼らを見つめて黙って拍手を送っていた。
本当なら、もっと歓声を送りながら拍手をしていたのだろう。
そう思うと、少しだけいたたまれない気持ちになる。
今年の夏、インターハイで自分たちはこうやって彼らに拍手を送ることが出来るのだろうか。
自分はふとそんなことを考えていた。
それは、単にそう思っただけなのか、それともこの後語られるであろう話に気が重くなったからなのかは分からなかった。
でも一つだけ分かっていることは、語られる話の内容を少しも知っていないのは自分だけだということだった。
自分はあまり人の過去を聞きたくないのだけれど、きっとこの話は聞かなくてはいけないのだ、と感じていた。
まぁ、どんな話をされようとも所詮は過去のことだ。
そもそも彼らが関係ある話とも分からない。
だから、どんな話であろうとも、よっぽどのことではない限り、ふーんそうなんだ、程度にしか思えそうになかった。
そもそも自分は過去のことをほじくり返すのはあまり好きではない。
春子「みんな、集合ですって」
七瀬「了解」
春子の声掛けでみんなゆったりとした足取りで歩き出す。
自分はこれからの帰り道で漂うであろう、お葬式のようなムードに今からげんなりとするのだった。
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