JAM | ナノ
 



(春子視点)



私としたことがやってしまった。
頭が覚醒してきて焦りを覚える。
日はもうかなり登りだし、9時30分。
もう授業は始まっているし、今から登校しても完全に遅刻、2時間目に間に合うのかさえ怪しい。
もう学校に行くかどうか迷うレベルだが、ふと脳裏にうちの腹黒部長の笑顔が浮かんだ。


……そうだ、今日はミーティングがあるから絶対に部活に参加しなくてはならないのだ。
死んでも参加するようにね、にっこりと笑う幸村の笑顔に奈緒やブンちゃん、赤也たちが震えていたのを思い出して嫌気が差したが、やはり命は惜しいと私は支度を始めたのだった。


結局、私が学校に着いたのは2時間目と3時間目の間の休み時間で、正門のところには今私がお会いしたくない人物の一人である柳蓮二が立っていた。



柳「おはよう。随分とぐっすり眠っていたようだな」


春子「まぁ、そういう日もあるのよ。……で、なんで柳がこんなところで立っているの?」


柳「今日は生徒会と風紀委員が遅刻者を取り締まる日でな。あらかた終わったと思っていたが、まさか春子が来るとは思わぬ収穫だな」



ニヤリと笑う柳を尻目に、私は今日の自分の不幸さを恨んだ。
最悪だ、よりにもよってこんな日に遅刻するなんて。
そして、なんて嫌な奴に捕まってしまったんだ。
生徒会なら、絵里だってどこかにいるんだろう。
それに他の風紀委員の柳生や真田だって……いや、真田でなかっただけ良しとしよう。


今日はきっと少しだけついていない日なのだ、星占いでいうときっと10位あたり。
とりあえず、柳に連行されてお説教をくらうしか道はないようだ。



柳「まぁ、今回は特別に見逃してやろうと思っているんだが……」



春子「本当に?ありがとう、じゃあ私行くわね」



そう言って私はくるりと背を向けたが、その肩をがしりと掴まれたのだった。
……どうやら、柳には私を大人しく教室に向かわせてくれる気はないらしい。




 






 
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