中に通された五人は今ソファに座っている。
彼女の向かい側には、立海男子テニス部レギュラー陣が並んでいた。
机を挟んで向かいに座っている春子と幸村の間に流れる黒いオーラにはあえて触れないでおこう、というより触れたくない。
幸村「で、話ってなんだい?」
春子「単刀直入に言うわ。七瀬と奈緒がマネージャーになるって話、それ水に流してくれないかしら?」
幸村「それはかまわないよ。でも、もちろんそれには、それなりの理由があるんだよね?」
黙り込む春子。
ニッコリと笑う幸村。
彼は自らの勝利を確信し、彼女は自らの敗北を感じていた。
彼相手にヘタな嘘は吐けないし、かといって、本当の理由を話しても、反論や打開策を彼は口にするだろう。
そのことが、いっそう彼女を黙らせた。
陽子「……心配なんだよ、二人が。お前ら、ファンクラブとかあるんだろ?」
幸村「それは心配ないよ。俺らがしっかりと彼女たちを守るから」
絵里「幸村くんは七瀬を、でしょ?」
笑みを深める幸村と、彼の痛いところを突く絵里。
彼は、一見小動物のような彼女がこのようなことを言ったのに、内心驚いているようだ。
どうやら、絵里の言ったことは、少なからず当たりらしい。
幸村「でも、高倉奈緒さんだって、他のレギュラーに守ってもらうよ」
陽子「守るってもなぁ……」
丸井「そんなに心配なら、陽子たちもマネージャーやれば良いだろぃ?それなら、その七瀬と奈緒って奴も守れるし」
丸井の突然の提案に三人は顔を見合わせる。
陽子「幸村、あたしらをマネージャーにしてくれ!」
幸村「そうだなー。良いよね、七瀬?」
七瀬「……え?自分は良いと思うよ。みんな自分よりもそういうの向いてると思うし。やる時はやる子たちだし。ね、奈緒?」
奈緒「うん、そうだね。ウチもそう思う!」
幸村「……じゃあ、決定ね」
ほら、歯車は回り出す。
17.06.11
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