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 ねつぞうが ひどい
 エンディング後の話





 病室にて猫の真似事。手首を折り曲げてにゃあああ。でも誰も寄ってきてはくれやしないしただ虚しいだけだった。諦めてもう一度眠ろうとベッドに体を沈めると、がちゃっと扉が開いた。先生だった。
「先生」
 起き上がるのも億劫で寝転んだまま先生を見上げる。先生は近くにあったパイプ椅子を引き寄せるとわたしの近くに座って言った。
「体調はどうですか」
「さっぱり」
 本当はものすごおく元気なのだが。わたしは可愛くない性格をしている。そう言ったわたしに先生は苦笑した。
 そしてふと、きょろっと首を動かすと何かを探すような素振りをする。どうしたんですか、訊ねるといや、さっき猫の鳴き声がした気がしたのですがと答えた。
「…………」
 わたしは黙って先生を見る。病室に猫なんているはずがないだろうと思ったが、それよりも先生が誰かに似ている気がした。
「先生は、音楽の先生」
「? はい」
「先生は、黒い服が好き」
「まあそうですね」
「先生は、猫が好き?」
「好きですよ」
 現実と夢を重ねてはいけない。だが確かに言えるのは、どちらの先生も好きだった。
「突然どうしたのです?」
 わたしは身を起こして小さく先生に似ている人を知っているんです、と呟いた。先生は至極不思議そうな顔をするので言わなければ良かったと思った。何となく気まずくなった空間で、そろそろお暇しますと先生が立ち上がってあちらを向く。
 とっさにわたしは猫の鳴き真似をした。
「?」
 すす、と先生がこちらを振り返り戻ってきた。そしてあなただったんですかとくつくつ笑う。そうだよ、わたしだったんだよ。そしてわたしは、夢の先生も現実の先生も、同じだったのだということにその瞬間気付いた。



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