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「チェシャ猫」
日曜日だった。
暇なのでとりあえず家を出るだけ出ようと思い用意をした。そうしてチェシャ猫の頭を撫でる。ごろごろと喉を鳴らして笑う。
「行ってきます」
亜莉子は部屋を出た。
ぱたん、扉を閉める。
「……はあ」
学校は楽しい。
叔父さんはやさしい。
さみしくない。
さみしくない、はずなのに。
「なんでかな……」
さみしい。
なんともいえない孤独感。
さみしいなあ。
「そうだ」
雪乃。
電話しよう、雪乃に。
たぶん雪乃ならこの胸のうちの憔悴を理解してくれるはず。
亜莉子は携帯を取り出し電話をかける。
呼び出し音が鳴って、すぐに相手は出た。亜莉子は嬉しくなって先走って話し出す。
「もしもし雪乃?」
しかし相手は出たものの、なんの応答もない。
「雪、乃?」
不安になって名前を呼ぶ。
だけどなぜかざーざーという音しか聞こえなくて、亜莉子は怖くなって電話を切ろうとした、すると。
「……………アリ、ス」
(アリス?)
「どうしたの雪乃、わたし、」
亜莉子だよ、と言おうとしたらぱっと音声が変わって
「あれ、もしもし?亜莉子?」
いつもの雪乃の声になった。
「あれ?雪乃?だいじょうぶ?」
「え、なにが?」
普段と変わらない調子の雪乃の口調に、亜莉子はさっきのは幻聴だったのかなと思いううんなんでもないと言い、それよりさあと雪乃を呼び出して一緒に遊ぶことにしたのであった。