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 俺が他の女と接点を持つことが気に食わなかったらしい。さっきから目の色がチラチラ変な輝き方をしている。
「デンジさんが浮気するなんて!」
「俺とお前そんな関係じゃないだろ」
 あはは、ビー玉が転がる音みたいにからから笑って彼女はつまらなさそうに俺の瞳を覗いた。
「あたし、自分でわりと物事に無頓着な種類の人間だと思っていたんです」
「へえ」
「でも、違うんですねちっともうまくいかない」
 俺は胃がキリキリする気がして目の前の女を見る。ずっとC調な彼女はどうしても無理をしている気がしてならない。そうして神様の裁きを待っているようだった。あーあ。自分に非がないと思っているふうに見えて嫌になる。
「あたしふしだらではないんです」
「そうか」
「虫みたいに見境がないわけじゃあないんです」
「そうかそうか」
 手元のカップを手に取ろうとして震える指先に気付いたらしい彼女は少し驚いた顔をした。俺は机に肘をついて彼女の双眸を見つめる。裁く瞬間。俺が神になる。
「お前俺に一言も言ってないだろ」
「なんですか」
「いや、俺も言ってないけどさ」
「意味がわかりません」
「言い方を変えようか」
 どうすればいいのか、一体自分の持つ感情が何なのか、彼女は理解していないようだった。噛み砕いて口移しでもして教えてやるよ。俺は少なくともわかっているつもりだ。彼女よりも。



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