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「ただいま……っと」
 いつも笑って僕を出迎えてくれるはずの彼女、は玄関に来てくれていなくてどうしたのだろう台所で火でも扱っているのだろうかと思い居間に入ると、畳の上で彼女は倒れていて背中に包丁が刺さっていた。血が水溜まりのように広がっている。
「アカネっ」
 慌てて駆け寄り肩を揺すった。僕の家で彼女がこんな目に遇うなんて、まさか僕の身代わりに、いやでも今までに僕は誰かの恨みを買うことなどあっただろうか、泣きそうになるのを堪えながらいろいろ思案しつつ必死に彼女に声を掛ける。すると突然彼女は俯せだった顔をこちらに向けてにやりと笑った。そしていつもの口調、「おっかえりー」。なんだそれ。拍子抜けてへたり込んだ。彼女は起き上がりながらドッキリでしたーなんて言うのである。
「びっくりした?」
「……すごく」
「あれ?笑わへんの?」
 笑いどころやでココ。彼女は言いながら僕の頬をぺたぺた叩いた。
「あの、その背中……」
 こんなときに笑うなんて、こんな心臓が破れそうになったのにそんな彼女の期待に添うなんてできやしない。見上げてくる彼女に疑問を投げ掛けた。彼女はきょとんとした顔をすると、ああ、と納得したように頷いて手を叩いた。すると背中の包丁がとろりとしたスライム状のピンク色に変化して間が抜けたような顔が現れる。ああメタモンだったのかと思った。
「あんな、この血糊もやねん」
 彼女は床の血溜まりを剥がすとぷらぷら振った。それもメタモンになる。そしてまた僕を見上げてきたが、僕の表情が変わらないのに少し怯えたような表情をした。
「……マツバ、あの、怒った?」
「……いや」
「や、だってなんか最近マツバ忙しそうやなーって思って」
 おろおろと彼女は掴んだメタモンを揺らす。そして涙目になると項垂れてメタモンから手を離した。
「……気ィ緩めてほしいなとか思うたんです、ハイ」
 曇った声で彼女は言った。僕は彼女の死んだふりが彼女なりの気遣いであったことに驚いたが反面嬉しくもあり、思わず垂れた彼女の頭に手を伸ばしていた。
「マツバ」
 頭を撫でられながら彼女はゆるやかに顔を上げて、ごめんなさいと言った。僕は笑ってありがとうと言った。彼女は驚いた顔をしてから笑った。





 後日仕返しというわけではないが僕が死んだふりをしたらアカネは失神してしまい、意識が戻ってきたところでドッキリだったことを伝えると泣きながら僕の鳩尾にパンチを入れてきたので今度は僕が失神してしまったけれど、それはそれで、あとで笑えるからいいだろう。



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例のYahoo!知恵袋の話から
霊感を受けました
あの奥さん素晴らしいです



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