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「友達のポケモン死んでもうたんよ、供養したってやマツバ」
 待ち合わせの喫茶店に着くや否や悲しそうな顔をしてアカネが言った。外が寒かったからか鼻が真っ赤である。寒いの?と茶化したくなったがそうすれば確実にアカネの機嫌は悪くなるのでとりあえず頷いた。
「なんで死んだの?」
「年やて」
「事故とか病気とかでなく?」
「うん」
 とりあえず供養というか、普通におくってやればいいのではないか。と言うと、せやねんけど、とアカネは首を振る。
「ただ、バトルで呪いばっかかけられたことあんねて」
「なるほど」
 それは確かに不安になるかもしれない。いいよ、とりあえずその子の家に行かないとね。そう言うとアカネは大きく頷いて案内するわ、と言った。店を出る。
「ウチのポケモンはまだ若いから年では死なんと思うねんけど」
「うん」
「あのこらがおらんくなるって思うだけで辛いわ」
「だから彼女のポケモンは、向こうでも幸せにならないと」
「うん」
 かなり遠いが、シオンタウンには喪に関する建物がある。最終的にそちらに連れていけばいいのだろうか、いややはり馴染みの土地が良いのだろうか。どうしてこちらにはそういった施設がないのだろう。そう思っているとアカネがこちらに手を伸ばしていた。少し泣きそうな顔をしていた。
「ごめん、ちょっとだけ」
「いいよ」
 アカネが僕の指に指を絡めた。少し驚いたが、小さな手だった。

 遠く雲が煙のようにたなびいている、昼間の青空が少し目に染みた。




……………………………………
 (指先を絡める)(泣き顔)(昼間)

 タイトル:泳兵



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