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 傷ついたふりをする冷たい頬の下のシーツが切なかった。
「痛っ」
 首筋に歯を突き立てられた。思わぬ痛みに思わず身を捩る。
「何するの」
「だめなの?」
 彼が覆い被さって見下ろしてきた。緑がかった長い睫毛が淡い電灯に煌めく。わたしは腕を伸ばし彼の胸を押した。
「痛いのは嫌いよ」
「前もそう言っていたね」
 わたしの首に彼がつけたあとを彼自身の指がなぞった。
「僕だって痛いのは嫌いさ」
 そうして、でも、と続ける。
「僕がトウコに痛い思いさせるのは、いいと思っている」
 見下ろしてくる視線に相変わらず人間らしい輝きはない。たぶん彼は未だ人間に成りきれていない。
「ねえトウコ、君が泣くのは僕のためだけにしてね」
「そんなのごめんよ」
「君がつらい思いするのは僕のせいだけがいいなあ」
(狂ってる……)
 そんなことをのたまいながらNはあの、ピュアでイノセントな瞳をこちらに向けてくる。何となく自分の手持ちのポケモンを思い出した。
「そろそろどいて」
「ねえ、今さあトウコはつらい?」
 きらきらした目。仕方ないと諦める。
「……うん、つらい。つらくて痛い」
 Nから目を逸らすと何故か泣けてきて固く目を閉じた。Nはそんなわたしの首元に顔を埋めて、ただ可笑しそうにしている。


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 タイトル:泳兵



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テーマ「人外ファンタジー」
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