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「お前そんなに俺に媚びることないと思う」
 唐突に彼にそう言われた。まるで仕事みてえじゃん、とつまり彼曰くあたしは風俗嬢の様だと言う。男性に媚びる仕事を全て風俗だと思い込んでいるらしい彼は彼らしいといえば彼らしい。
「媚びじゃないですよ」
「じゃあ何なのお前さ、」
「何であたしが媚びを」
「優しすぎる」
 驚いて口が半開きになった。
「そんなことありません」
「じゃあさ、お前俺が飯作れって言ったら作るだろう」
「作ります」
「買い物行けって言ったら行くだろう」
「行きます」
「変な服着ろって言ったら着るだろう」
「着ます」
「手錠着けろって言ったら着けるだろう」
「着けます」
「おかしいだろ、絶対」
 彼は困ったように頭を掻いた。実際彼はめったにわたしに命令をしない人間なのだが。わたしは彼の方こそ優しい人だと思った。思わず笑ってしまう。
「あたしは媚びてるつもりではなかったんですが、デンジさんが媚びと言うなら媚びでいいです」
「何だ」
「好きですよ」
 最後の一言で何か終わってしまった気がするが、気にしないでおこう。彼は笑えそうなくらい目を点にして、あたしを見ていた。


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(風俗嬢と手錠の出てくる優しい話)
(キーワードとして入れるのが精いっぱいだった)



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