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「ずっと考えてたんだけどさあ」
 夜に二人でテレビを観て、そのまま寝てしまい気付けば空が群青色に染まってきていた頃だった。気がついた瞬間から二人して冷たいフローリングに寝っ転がってたけどわたしは起きて立ち上がろうとする。すると彼がそんなことを言い出したのでわたしはそちらを振り向いた。わたしがそうするのと同時に彼がわたしの手を掴む。彼はわたしの方に転がった。
「俺らさ、まーあれじゃん、別個の生きもんじゃん」
「そうだね」
「ひとつになるなんて無理な話じゃん」
「まあね」
「好きだよ」
「何なの」
「それだけなんだけどさ」
 わたしは彼を見下ろす。彼の手に隠れるわたしの手。
「とりあえずお前は俺といるわけで」
「うん」
「手え掴んでも払わないわけで」
「うん」
 彼がなにを言いたいのかわからない。そもそも普段あんまり喋らないのでやけに饒舌な今日、ちょっと不安になる。
「で、何よ結局」
「ん?うん、」
 彼はわたしの手を掴んだまま仰臥する。空いた方の腕で顔を隠した。
「結婚でもしませんか」
 体温で生ぬるい床、彼は黙ってしまったわたしを腕の隙間からちらり覗き込んで見てどうなんだよと言った。わたしは笑って手を握り返す、ことだけした。



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