b | ナノ
「いちにいさんまのしっぽ」
「ごりらのむすこ」
「なっぱーはっぱ」
「くさったとうふ」
「何それ」
「ん?」
アカネがぼんやり歌っているその唄が何だか気になって訊いてみた。腐った豆腐ってなんだ。
「ああこれ、やたらばーちゃんが歌ってたんよ」
「ふうん」
「マツバ知らんの?」
「初めて聞いた」
「へえ」
ほなエンジュにはこんなんないん、とアカネが言うので考えてみる。「あ」
「なんかあった?」
「うん。さよならさんかくってやつ」
「なにそれウチ知らへん」
「ほんとに?」
「歌ってや」
「や、僕音痴だから勘弁」
紙に歌詞を書いてやる。
「さよならさんかく」
「またきてしかく」
「しかくはとうふ」
「とうふはしろい」
「しろいはうさぎ」
「うさぎははねる」
「はねるはかえる」
「かえるは……って」
隣で紙を見ながらぶつぶつやってたアカネはちょっと驚いた声を出した。
「とちゅうからウチ知ってるわコレ」
「そうなの?」
「うん。始まりだけ違うんや」
「へー。隣町ってだけなのにね」
アカネは少し首を傾げて、なあ、と呟いた。
「ウチらに子供出来たらどっち教える?」
一瞬頭が真っ白になった。