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「事故したって」
「ご覧の通り」
「ふざけてるんじゃないですよ」
 今朝車と合致して頭を強かにぶつけた。現在俺は頭を包帯でぐるぐる巻きである。
「痛いですか」
「死ぬかと思った」
「嘘」
「嘘」
 四角い白い箱の中、ブラインドから差し込む柔らかな明かりに安堵する。流石の俺もあの時は流石に驚いた。別段死について深い感慨もなかったがああもう死ぬな俺、と思った瞬間本当に走馬灯のように記憶が脳内を駆け巡ったのだ。
「始めにポケモンのこと思い出した。あいつら誰に面倒見てもらおうかとか、そんで家族とか友達とか他のジムリとか色々」
「わたしは」
「お前は最後だった」

「……ひどいですよ」
 眉尻を下げていつも通りの困った笑顔、そうだ俺が最後に思ったのはその顔だったんだよ。
「最後だからこそ、な」
 彼女はよくわからないといったような顔をした。俺はベッドから半身起こすとベッド脇のテレビを点ける、偶然ニュースを映し出してそれが俺の事故のことだったから思わず笑ってしまった。それが頭に鈍く響いて、痛い。
「デンジさん」
 名を呼ばれて彼女を振り返る、傷が痛むがそれが生きているということを実感させ更に心配そうに俺を覗き込んでいる彼女の顔が目の前にあるのを不思議に感じ、ああいつもの日常みたいな光景だったと思うと同時にそれは生きていなければ感じられない感覚だと知る。暫く信号無視は自重しようと思った。



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