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 過去の玩具ばかりの部屋を思い出す。ふらり寄ったデパートの子供玩具のフロアの、ミニカーやぬいぐるみやモビールを眺めていると不安で堪らなくなった。
「お客様?」
 知らぬ間に蹲っていたらしい、店員に話し掛けられている。僕は立ち上がり首を振るとそのフロアを飛び出した。
「……はあ」
 誰もいない階段に座り込んで頭を抱える。これからどうすればいいのか未だに分からなかった。生活だけは保証されていたあの生ぬるい泥に浸っていたような日々。フラッシュバックする過去には吐き気を催す気分になるが居心地は悪くなかった確かに。自分は甘えることしか知らない。
「あの」
 不意に少女の声が頭上に降ってくる。目だけそちらに向けると明るい肌色をした足があった。無意識にトウコ、と呟いたが戸惑うような声をその少女を漏らしたので顔を上げると全くの知らない少女だった。
「えっと、大丈夫ですか?」
「……うん」
 今日は変に声を掛けられてばかりだな、苦笑して僕はゆっくりと立ち上がる。甘えしか知らない自分。仕方ないではないか。過去を悔いたところで現状はなにも変わりはしない、それならば今から何かを変えようとしたって遅くはないはずだと、思う、
(……トウコ)
 たくさん手に入れて手放してきたトモダチだが、彼だけは側にいた。ゼクロムをボールから出す。それを見てか驚いた表情をする少女を置いて、階段の近くにあった大きな窓を彼に割らせると僕は空へ出た。
 彼女を探そう、そう思ったのだ。



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