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 怯えた表情をして帰宅してきた彼女に明らか俺のでない男を匂わせる感じがした。お帰り。びくり。彼女が体を強張らせた。いつも通りの声出したはずだろ俺、なんでそんな震えてんの
「ご、ごめんなさ」
「何が」
「えと、……はい」
「オーバ?」
 彼女の怯えた顔がさらに青ざめた。違うんです違うんです首を振って泣き出しそうな顔をして俺にすがってきた彼女を足蹴にしたくなる。俺に悟られたくなきゃもっと堂々としていりゃあよかったのにさ。しかし彼女の正直に小さく震える肩は本気で俺に謝ってくる。俺は彼女の頬に触れた。
「お前ってさ、演技派なんだな」
 思ったより冷たい言葉が口から飛び出して言い過ぎたかななんて思ったのだが、とうとう泣かせてしまって崩れ落ちた彼女に俺はひどく、欲情してしまったのである。



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テーマ「人外ファンタジー」
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