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 窓の向こうから叩きつけるような雨音がする。たぶん夕立だろうからすぐにでも止むのだろうと思った。
「デンジさん知っていますか」
 隣でぼうとテレビを見ていた彼女が呟く、何だよお前寝てたかと思った驚かせんなよ
「雨の数よりシャボン玉をたくさん飛ばすと、雨は止むそうです」
「へえ」
 なんてかわいいお話なのだろう。でもんなの無理に決まってんじゃん。と言いかける。言いかけてやめる。
「雨止んでほしいですねえ」
 大した返事は望んでなかったらしく彼女はまたぼんやりと視線をテレビに戻す。その時少し揺れた彼女の髪からシャンプーか何かのシャボン玉の匂いがした。今にも割れてしまいそうな儚い感じがした。
「ミカン」
 存在を探るように呟けば彼女の耳元で生ぬるく広がり霧散する。きゃあと声を上げ驚いた顔をする彼女を愛しいと思う。
「そういやトイレの棚にシャボン玉の液を置いてた気がする」
「なんでそんなとこに置くんですか」
 もう使わないと思ってたんだけど捨てるに捨てられなかったんだよと言いながら、だがそれはもうきっと古びてシャボン玉の形を作ることすら容易ではないのだろうと思う。思いながらなぜ俺はそんなものを持っているのだろうと考えてみた。そういえば昔の俺は先程の彼女の話を知っていた気がする。



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