b | ナノ
錆びた線路の上に立つ。
とうに使われていないらしくずっとそこにいても電車は来なかった。
「グリーン」
声に振り返るとリーフがそこに立っている。何でここにいんのと訊ねるとむしろあたしが訊きたいわと答えられた。俺はふと思い当たったので言ってみる。
「スタンドバイミー?」
リーフは笑った。あの映画。そう、家のデッキに差してあったから思い出して来たくなったのと言う。俺もだよと言った。
「あれ、いつもあたし線路に行くとこまでしか起きてらんないの」
「俺らいつもそうじゃん」
「だね」
ナナミが買ってきた映画。
幼かった俺とレッドとリーフでテレビの前に座って。
だが二十分もつけていたら皆眠ってしまっていた。
「……今度、また俺んちで観るか。三人で」
「リベンジ?」
「ああ」
線路を歩く。壊れた線路の一部を飛び越えたりして、そんな俺の後ろにリーフがついてくる。ざりざり砂利が擦れる音がして昔を思い出すような気持ちになる。リーフの足音は小さい。
どっか行っちまったレッドと違って昔と変わらないリーフに少し泣きそうになった。
「俺さ」
「なーに」
「こんなに皆と離れちまって会えないんならさ、昔の俺らに戻りてえとか思うんだけど」
「…………」
リーフの返事がないので後ろを見る。すると俯いていて、その姿をじっと見ていると今にも泣き出しそうな笑みを浮かべながら顔を上げた。
「そうだね」
レッドの所在がわからない今、幼馴染みとして側にいるリーフの存在は大きい。俺は手をリーフに伸ばした。
「お前は側にいてくれよ」
俺は気恥ずかしいだとかそんなこと思う間もなくて、とにかく心からそう思ったのだ。リーフは俺に近寄るとうん、と呟いて、俺の手を握った。
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せめて離れてしまわないように